商品開発への想い


医療者と約40名のモニターで開発した商品

現在年間約9万人が乳がんに罹患しており、2013年からインプラントによる乳房再建が保険適用になったことを受け、乳房再建手術を受ける人が年々増加しています。
乳房再建後の患者の乳房は、手術による腫れが落ち着くまでに日数を要し、さらに左右差により実用的に使える廉価なブラジャーがこれまでありませんでした。乳房再建患者が納得して使え、さらにその後も活用できるブラジャーを作りたいとの思いから、乳房再建手術の先駆者である形成外科医武石明精医師に直談判し、女性医療従事者と乳房再建患者40名の協力のもと、2年間で20回の試作を重ねて完成にいたった商品が、ルルフィットエメリタ(特許取得商品)です。
開発にあたりアドバイスをいただいた武石医師より、開発商品についてコメントをいただきました。

武石明精医師プロフィール

UCLAに留学し、自家組織移植による乳房再建の先駆者であるWilliam Shaw教授に直接指導を受ける。
自家組織とインプラント両方の乳房再建手術をし、再建症例は1,000例を超える。自家組織では「乳房再建MT式計量システム」を考案。

経歴
社団法人乳房再建研究所理事長
順天堂大学形成外科 客員教授
東京医科大学形成外科非常勤講師
静岡県立静岡がんセンター再建形成外科特別非常勤

乳がん手術後の患者さんが、よりよい人生を送るための「乳房再建」

30数年前、留学先のUCLAで師事した形成外科医のウィリアム・ショウ(William W. Shaw)博士の再建医療に対する真摯な姿勢に接し、強く共感したことが、私が乳房再建を志したきっかけです。「命さえ助かれば、患者さんがコンプレックスを抱えて生きていってもいいのか。命を救う医療があるのなら、その命で楽しく暮らすための医療があってもいいはず」。ショウ博士が示してくれたこの乳房再建への哲学は、いまも私のバックボーンとなっています。
ウイリアム・ショウ先生から学んだ技術と哲学、その後30年培ってきた私の乳房再建の経験を若い先生方に伝え、後進を育成し乳房再建の裾野を広げることが私の使命と考え、日々精進を重ねています。

乳房再建に特化したブラジャー
ルルフィットについて

再建手術後の乳房は、腫れや感覚の低下があります。 そのため通常のブラジャーでは締め付け感が強く、苦しく感じます。さらに再建乳房を圧迫することで、術後の毛細血管の新生を障害する可能性があります。

再建した乳房は、表面の傷が治っても回復の変化は続いています。その代表的な変化が再建乳房内で起こる毛細血管新生です。乳癌手術や再建手術で毛細血管は切断され、手術後に再生します。
自家組織移植で再建した乳房では、移植組織本来の血行があるため、表面の傷が治った後は多少圧迫しても壊死することはありません。

しかし、本来の血行だけでは十分に柔らかい乳房は再現できません。 十分に柔らかい乳房を取り戻すためにも、毛細血管が重要です。 毛細血管が再生されることで、移植した組織の血行がより豊富になり、本来の柔らかさを取り戻します。
毛細血管の再生は、術後数か月で完成します。この間に合わないブラジャーで再建乳房を圧迫すると、毛細血管は再生されなくなります。
毛細血管はデリケートな組織で、爪を指で軽く押すと白くなることでも分かるように、軽い圧迫でも再生が障害されることがあります。術後の再建乳房は感覚も鈍いため、本人が圧迫に気付かないこともあります。


腫れや感覚が低下している乳房への締め付けによる不快感をなくし、圧迫による毛細血管新生を障害させないために開発されたブラジャーが、ルルフィットです。ルルフィットは、生地の素材、縫製とホックを工夫することで、乳房を圧迫しない“まとっている”感覚を実現した、乳房再建に特化したブラジャーです。

再建後の胸の左右差を調整できる
エメリタについて(特許取得商品)

乳房はもともと大きさや形に若干の左右差があります。しかし、再建した乳房では乳癌手術前とは違った左右差が生じることがあります。特にインプラントは既製品で、多くの種類はあるものの形や大きさに制限があります。

年齢的変化や出産授乳の影響、若くても本来の乳房が大きい方は、乳房下部がアンダーラインより下にある、いわゆる下垂状態の方が少なくありません。インプラントの再建は下垂の再建が難しく、アンダーの位置を合わせると見た目の左右差が生じます。 また見た目の位置を合わせるとアンダーの位置の左右差が生じます。たとえ下垂が再現できても術後年数の経過とともに下垂状態の維持が難しくなることがあります。

このような状態で通常のブラジャーをつけても、見た目の左右差が改善されないことがあります。特に再建乳房のアンダーの位置が下にずれている場合、通常のブラジャーをつけると解剖学的な骨格の状態によってブラジャーは健側のアンダーの位置にきます。
再建側は、ブラジャーのアンダー部分が再建乳房に乗っている状態で、ワイヤーが皮膚やインプラントを圧迫します。この状態が長年続くと、皮膚が傷んだり、インプラントが折れる原因になり、将来的にインプラントの露出や破損につながることがあります。

この再建過程で生じた左右差を、乳房に負担をかけることなく調整するために開発されたブラジャーがエメリタです。エメリタは、左右のアンダーの位置の上下やワイヤーの長さを別々に調整できるため、再建乳房に過度の負担がかかりません。また、一般的なパットと違い、再建後の左右差に合わせてパットの大きさや位置を調整できるため、見た目の左右差も改善されます。


乳がんについて

アボワールは商品を販売するだけではなく、乳がん患者さんの助けになるさまざまな活動に取り組みたいと考えています。今回は水田乳腺クリニックの院長 水田成彦先生に、乳がんについてお話をお伺いしました。 乳がんは女性のがんの中でもっとも多いと言われ、患者数も年々増え続けています。多くの方に乳がんの現状を知っていただければと思います。

水田成彦医師プロフィール

経歴
大阪医科大学卒業
京都府立医科大学 第二外科入局
京都府立与謝の海病院 外科勤務
京都府立医科大学 第二外科勤務
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科 助教
水田乳腺クリニック開院
京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科 客員講師

認定医
日本外科学会指導医/日本外科学会専門医/日本乳癌学会専門医/がん治療認定医

水田医師からのコメント

日本における乳がん発生率は、年々増加しています。その原因は、出産年齢の上昇、短い授乳期間、飲酒、喫煙、ストレスなど多岐に渡っています。1998年移行、日本の乳がん罹患数はずっと第1位になっています。

乳がんの発生は20代から認められるため、特にお母さんや叔母さんなど、血縁に乳がんを罹患された方がおられる場合は20代から定期的に乳がん検診を受けていただくことを強くおすすめします。以前日本の乳がんの特徴として、40代の女性に発症のピークが見られましたが、近年欧米と同様に60代にピークが認められるようになっています。つまり幅広い年齢層で発症するがんであると言えます。

乳がんは発症件数は多いものの、早期に発見できさえすればとても高い確率で命を救うことができるがんです。早期発見のためには、視触診だけでは十分と言えず、マンモグラフィと超音波検査による乳がん検診をうけていただくことを強くおすすめします。
現在のところ決定的な予防法はありません。年1回の乳がん画像検診を受けて早期にがんを発見することが、1番の予防法と言えます。